第14回 美のドラマを瞬間に凝縮させる写真家 下村一喜

Words from 山口小夜子

下村さんは現在パリにお住まいです。パリ・コレクションで訪れたときなど一緒に美術館を巡ったり、たいへん親しくさせていただいております。

これまで撮影のお仕事でも何度もご一緒させていただいてきましたが、打ち合わせと称して話し込むこともしばしばあります。ファッション、文学、アート、映画、あらゆる知識を豊富にお持ちで、とにかく話題がつきません。撮影現場でも次々とテンポよく繰り出される冗談まじりの軽妙なトークで周りをなごませ、笑いのあがる和やかな空気を一瞬にして作り出してしまいます。

けれどカメラを手にした瞬間に一転、まるで別人のように火花が飛び散るかのような迫力で挑まれます。被写体や自分自身の中にある映像との対話だけに、集中されているのでしょう。求める瞬間を捉えるときの集中力と、パンっと切る踏ん切りの良さ。とても男性的な力強さを感じます。

そうして創りあげられる写真は、ドラマティックな世界。数々の雑誌の方が一緒にお仕事をしたいとおっしゃられているのもうなづけます。お話を伺って、子供の頃から映画が好きで、セルジュ・リュタンスが好きで、と育まれてきた美意識が、下村さん独自の美の世界を創りあげているのだとわかりました。そうして育まれてきた高い美意識で、これからも夢のある世界に私たちを誘ってください。

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