第11回 自らと重ねて楽器のエネルギーを引き出す和太鼓奏者 堀つばさ

Words from 山口小夜子

鼓童の前身にあたる「佐渡の國鬼太鼓座」の公演を始めて見たのはNYでのこと。70年代後半に行われたその公演は、NYでも大絶賛されていました。そこで出会った林英哲さんとは、その後何度かパフォーマンスで共演したり、和太鼓とは私も不思議にご縁があります。

その後林英哲さんは、1981年に結成された和太鼓集団「鼓童」の名付け親となり、ご自身は独立されてさらに独自の和太鼓表現を貫かれ、「鼓童」は受け継いだものを新たに発展させた表現で、それぞれ世界に発信していくことになります。ところで日本の伝統的な楽器である和太鼓を使い、芸術の域にまで高めたこうした表現は、実は新しいものなのです。和太鼓そのものは祭り囃子の中で叩かれてきましたが、和太鼓を主にしたこうした表現は、トラディショナルでありながらとてもコンテンポラリー。「鼓童」では当初、太鼓を叩くのは男性、女性は唄や踊り、と役割が分かれていました。

そんな中でつばささんは、鼓童の女性としては初めて、演奏者としての自分が依って立つ所を太鼓に定めた方です。今でこそ女性の太鼓奏者も増えましたが、その嚆矢となった方です。舞台の上で和太鼓に向き合われる姿を垣間見て、女性が和太鼓を叩くということについてお話を伺いしたいと思っていました。これまで世界中のパーカッションと共演してきた中で、じつは私の中には太鼓は男性のものだ、というような感覚がしばらくありました。もちろん韓国の五面太鼓や長杖鼓のように、女性が舞いながら叩く、優美で美しい打ち方もありますが、男性的な力強さを持って女性が太鼓を叩くリリシズムや美学が確立されたのは、特にここ10年くらいのことではないかと思います。叩きたい、伝えたい、自らを楽器に重ねて音を響かせたい、というつばささんの強い意志がその道を切り開いたのでしょう。そんな彼女の姿を見ていると、女性や男性という性別にわけられるものではなく、そこに向かう強い精神があれば、未来へと向かおうとする意志があれば、どんなことにでも挑戦していけるし、どんなことでも昇華していけるのだと、思います。

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