第4章 終わらない旅

高木
インタビューのときに小夜子さんが毎回、必ずした質問があったでしょう。「子供の頃は何をして遊んでいましたか」とか。
山口
今、みなさんがなさっていることとどこかしらリンクしている答えが返ってきて、吃驚しました。あと、年齢関係なく矢沢永吉さんのファンが多かったのも、面白かった。いい意味での“不良道”のようなものをみなさんお持ちで。
高木
意外といえば、引きこもるのが好き、という人も予想外にいましたね。
山口
常に引きこもっている人は外に出ることが大事だと思うけれど。クリエイターにとってじつは引きこもることって大事じゃないかと思うんです。ものを創る人は、人と対応して発散しすぎるとだめな場合もある。自分の深い部分に降りていって引き出さなくてはいけないから。引きこもる事によって自分が見えてくるでしょう。
高木
一人になる時間を持つ、ということですね。
山口
そう。由利子さんもたくさん海外に行かれるけれど、じつは引きこもりと同じことを経験しているかもしれない。人によっては外に出ても引きこもれるの。今の東京から隔離されて、自分と出会うことができるから。
高木
確かに似ていますね。大自然の苛酷な環境にいると、涙が出るほど自分に戻ってきてしまう。都会では見えてこないような、自分の問題点などが見えてくる。自分から逃げられない、自分と対峙せざるをえないんです。
山口
砂漠の真ん中に一人でいたら、自分の心臓の音しか聞こえなかったりするでしょう。そういう意味では引きこもるということは、自分の世界を広げる旅なんじゃないかとも思うの。家の中にいても旅はできるし、ちょっと近所に散歩するだけでも旅になるし。旅をする気持ちで出かけると旅になるの。そういうふうに考えると楽しいんです。
高木
“Life is 旅” ね。
山口
この連載が終わっても、蒙古斑革命という私たちの旅も続きますね。ユーラシア大陸の東側、アジアの東の端の日本という国に生きる人々の根底にある美学の核のようなものを、これからもずっと見つめていきていたいと思います。仕事の表現の中で少しでもその片鱗を形にできればと思っています。どうしようもなく美しいと思う、どうしようもなくこれを選んでしまう、それはおそらくDNA がなせる技だと思うので。
高木
そうですね。終わってしまうのは寂しい気もしますが、これってほんの一部、第一幕にすぎないんです。
山口
ほんとうに、ほんの一部なの。
高木
さわりにすぎないから、これからも続けていくと思う。そうしてこの連載を読んでくれた人が、一人でも多く、この蒙古斑革命に加わってくれればいいと思います。
山口
雑誌の中から飛び出して、さらに出会いの輪を沢山広げていけると素敵ですね。頑張りましょう。
山口小夜子×高木由利子
インタビュー 2007年6月
構成:下田敦子 (再構:星野圭一)