- 高木
- 「蒙古斑革命」の話が最初に出たのは、2年くらい前だったかしら。
- 山口
- あるとき、由利子さんから電話があってお喋りをしていたら、同じような思いを抱いていたことがわかったの。お互いに何年も考えていたことだけどなかなか実現に結びつかなくて、それを二人で話していたら、次第に「蒙古斑革命」という形にまとまっていったんです。
- 高木
- そもそも私は、アイデンティティや存在価値をテーマにしたドキュメンタリー映画をつくりたくて、そのインタビュアーを小夜子さんにお願いしようと思っていたの。その内容を話したら小夜子さんは小夜子さんで似たようなことを考えていた。
- 山口
- そう。そのころ私は、私の周りにいるひとたちの中に、独自の美意識を体現している人がたくさんいることに気づき始めていて。流されないで、自分なりの表現をしているたくさんのカッコいい人たちの今を、ちゃんと残しておきたいと思っていたの。
- 高木
- 私は世界中旅しているうちに「ほんとうの”カッコよさ”は何か」ということが興味の対象になって、西洋至上主義に対してすごく疑問を持つようになっていたの。特に我々アジア人が、西洋文化に変なコンプレックスを持っていて、そのために本来持っていた誇りや美意識をどこかに忘れ去ってしまっているように感じられて……。
- 山口
- 異文化に対して、それを取り入れ近づこうとするのはいいんだけれど、自覚してではなく、無意識に流されているだけの姿がカッコ悪いことなんだと思う。西洋人や西洋文化は、日本人や日本文化より優れているというイメージがいつの間にか刷り込まれてしまっているから、多くの場合は流されてしまう。
- 高木
- そう、流されてしまうことが問題なの。
- 山口
- 生まれたときに私たちアジア人のお尻にある蒙古斑のように、流されず、侵食されない独自の美を保ち続けている”美しい人たち”が確かにいる。その”美しさ”を探り、伝えるプロジェクトが「蒙古斑革命」という形になったんですよね。